スタッフからのメッセージ 看護スタッフ

副センター長(看護師)  韮澤 博一

近年、複雑で変化の激しい社会情勢の中、様々なストレスを抱え、アルコール依存症で苦しんでいる方の相談が絶えません。社会の高齢化と平行して、当センターに入院中の患者さんの3割近くが60歳以上の方となっており、入院相談では年々、70歳や80歳の方の相談が増えています。

また、アルコール依存症で入院された女性の患者さんにおいては、過去にAC(アダルトチルドレン)*として厳しい家庭生活を乗り越えてこられ、その後結婚し、子どもを授かり、平穏な家庭生活を希望しつつも、たくさんの問題を抱えて入院されているケースも数多く見受けられます。また、患者さんやご家族から、お子さんが不登校や情緒不安定になって困っている、などのご相談も数多く寄せられています。このように、アルコール依存症はご本人の問題にととまらず、家庭内に様々な問題を引き起こす病でもあるのです。

当センターにおいては、その人(年齢・性別・仕事・家族問題)にあった治療プランを提案し治療に臨みます。身体問題は内科医が複数体制で総合的な検査を行い、多臓器疾患のチェックを行っています。 早期発見・早期治療の観点から、2011年(平成23年)度より保健所・警察・救急隊・行政・一般の総合病院・自助グループなどで連絡協議会を立ち上げ、板橋区内におけるアルコール関連問題の地域連携の強化にも力を入れています。また、従来の家族支援はもちろんのこと、世代間連鎖の予防として、「子どもプログラム」を継続的に行っています。これは日本の専門医療機関では、初の試みです。 その時代に合ったアルコール専門医療がご提供できるよう精進していきたいと存じます。

*AC(アダルトチルドレン):親から虐待を受けたり、アルコール依存症の親がいる家庭で育ち、その体験が成人になってもトラウマとして残っている方のこと。