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2013.05.08ストレスケアセンター医師よりメッセージ ~入院治療でのうつ病の精神療法~

ストレスケアセンター担当医 堀田信二

今回は、「入院治療でのうつ病の精神療法」について、私が思っていること、感じていることをお話ししたいと思います。


私は、様々なうつ病の患者さんと話す中で、「日々の生活の中で直面する様々な困難を、今までの自分なりの精一杯のやり方で解決しようとして行き詰っている」という共通点があるように感じます。つまり、うつ、という症状は、「今までは価値あるものだった生き方をそろそろ見つめ直す時期である」という患者さん自身の無意識からのメッセージを含んでいるように思います。その点では、今の苦悩は、それを見つめ直すことで、よりよく生きるための機会となる可能性を秘めているのではないでしょうか?


 では、精神療法とは一体どんなものでしょう?
 患者さんの側から言うと、「治療者と場をともにして言葉を通してやり取りし、その場で湧く様々な考えや気持ちを通して、自分の心の中を見つめ直して整理し、自分についての理解を深め、思い込みに気づき新たな自分を発見し、それをまた言葉にしてやり取りしていく...という一連の営み」である、と私は思っています。
 治療者の側から言えば、「患者さんとのやり取りを通して、その人が体に感じる様々な苦痛やこころの中にある不安・焦り・悲しみなどの苦しみの感情をわかろうとし、その人が自らを縛るものから解放されて回復の道をたどる、そのお手伝い」となります。


 さて次に、入院治療で精神療法を受けることの効用について考えてみます。
 通院治療での診察では、大半は話す時間が限られ、診察を受ける頻度も多くて週1回、大体は月1-2回程度が現状ではないでしょうか?また、診察する側も、大抵は、診察室で患者さんが話す限られた内容のみを頼りにその人をわかろうとすることになります。上に述べた精神療法の意味から考えると、この状況では、お互いいささか心もとないやり取りになる、と言わざるを得ないでしょう。
 入院治療では、通院での診察に比べ、まず時間や頻度という点からみて、治療者と密に接することになります。さらに、患者さんが生活の場を丸ごと病棟に移し、その場で多職種の治療スタッフとのかかわりがあり、その人についてのさまざまな理解が治療チームの中で共有され、その理解を治療者が知りながら関わるという、密度の濃いやり取りになります。
 また、病棟で出会う、自分と同じような苦しみと向き合う仲間の言葉が深く心に響くこともあり、広い意味では、そういう体験も入院における精神療法と呼べるかもしれません。


 ストレスケアセンターでは、普段の生活を離れて安心できる環境でこころとからだを癒し、その中で、私たち治療スタッフや同じような苦しみを持つ仲間たちと場をともにし、自分を見つめ直して、苦悩の中に眠る自然治癒力に気付きそれを感じる力を育てていく、お手伝いをしたいと思っております。