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2017.10.13ひとことエッセイ・・・

チャコ

私が住んでいるマンションの敷地を縄張りにしている一匹の野良猫がいます。三毛猫なのでメスなのでしょう。茶色はかなり褪せていておばあちゃん猫のようです。その年まで生き抜いただけあって逞しい猫で、若い猫と取っ組み合いの喧嘩をして追い払う姿を見かけたこともありました。人間には懐かず、こちらが声をかけるとギョッとしたように立ち止まり、近づこうとすると逃げてしまいます。我が家ではチャコと名付けて気にかけていました。

チャコはガリガリに痩せた猫でした。ある時、近所に住む親切な方が不憫に思って、捕まえてご自宅で保護しました。エサをもらううちに人間に懐いていくだろうと思ったのですが、その方によると結局最後まで懐かず、半年ほどした頃に隙をついて逃げ出してしまったとのことでした。

それからまた縄張りを徘徊する姿が見られるようになりました。半年間蓄えた栄養のおかげで以前より肉付きもよくなり、そしてやはり多少は人間への警戒も解けたのでしょう。呼びかけると小さな声で返事をするようになりました。ただし相変わらず近づかせてはくれませんが。

仕事中や移動中にふとチャコの姿が私の頭をよぎることがあります。唐突にやってくるチャコのイメージは様々で、青空の下でマイペースに過ごす微笑ましい姿だけでなく、みすぼらしい毛並の弱々しい姿だったり、人間に拘束されるのを望まない孤高で逞しい姿だったりします。弱った姿を思い浮かべると、「最近見かけていないけど果たして無事に生きているのだろうか」と心配になることもあります。チャコは野良猫として屋外を徘徊しているだけでなく、私の心の中も徘徊しているみたいです。

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心の中のチャコは、その時々に私の中ではっきりと意識していない感情を投影されて活動しているらしく、弱々しいチャコが浮かび上がる時には私も弱っているということのようです。また、チャコの孤高の姿に励まされることで、自分が孤独と心細さを感じているのだと気付いた時もありました。

今朝妻とチャコについて話していると、妻にとってのチャコの魅力の一つは「言葉を話さないのが良い。言葉が通じる相手だとあれこれ期待してしまって、それが叶わないと腹が立つから。」だと言っていました。チャコは私に対する妻の不満の受け皿にもなってくれているようでした。

自由を好むチャコの意に反して、どうやら人間それぞれが勝手にチャコを心の中に住まわせているみたいです。

小倉